『ミミズクと夜の王』

宇多田ヒカルの本を挟んではいましたが、
このところずっと『QEDシリーズ』を読んでいたので、
ちょっとテイストの違うものを読もうと思い、
本棚から引っ張り出してきた本、ミミズクと夜の王


ずいぶん前に買ったものの、何故だか気分が乗らず
ずっと読まずにほったらかしになってた本です。
解説を有川浩氏が書いていて、
以前に読んだ氏の作品がわりと面白かったので、
氏が薦める作品ならと思い、読み始めました。


このミミズクと夜の王
2006年の電撃小説大賞、大賞受賞作です。
ストーリーは王道のファンタジーラブストーリーで、
有川浩氏の解説の中の言葉を借りれば、
”平易な文章で綴られるお伽噺”だそうです。


失礼を承知で、
正直云ってそれほど上手い文章だとは感じませんでした。
お伽噺だからといって、平易で良いとは僕には思えません。
もっとキャラクターに深みを持たせれば、
もっと世界観を掘り下げていけば、
もっと面白い作品だったと思います。
しかし、それでも読了後の感想は、僕も有川浩氏と同じでした。


白状します。泣きました。
見事に引っこ抜かれました。


歳を経ったせいか、
最近、こういうストレートなラブストーリーに対する耐性が
ものすごく低くなってます。


幸せの定義なんて、自分で決めるものだということ、
帰る場所なんて、他人に決められるものではないということ、


そんな当たり前のテーマを
ここまで奇を衒わずに描ききるというのは、
簡単なことではないと思います。

わりと搦め手が好きな僕としては
いろいろ思うところのあるお話ですが、
爽やかな読了感に浸れる本でした。


そうか、”お伽噺”の本質は、
人でないものが、人に加わる噺なのかもしれないな。
僕は人に加われるのだろうか。


『「人の記憶勝手に消すんじゃねーや
  フクロウの馬鹿あああああああああ!!」』


『「馬鹿はお前だ。……愚か者め」
 しかし小さなその呟きを、
 聞きとどめる者はいなかった。』


ミミズクと夜の王 (電撃文庫)

ミミズクと夜の王 (電撃文庫)