『インストール』

流行の最先端であったものが、
そうであったが故に、
その後、とてつもなくチープなものになってしまう。
ムーブメントの中心に位置していたが故に、
それが終わったときに、
最もチープなものになってしまう。


小室ファミリーの音楽や、
ケミカルウォッシュのジーンズのように。
(ケミカルウォッシュのジーンズは
 最近また流行らでようとしてる人たちがいるみたいですが)


この『インストール』という小説も
そういう作品なのかもしれません。


この『インストール』
'04年に『蹴りたい背中』で、19歳で芥川賞受賞を最年少受賞した
綿矢りさ氏のデビュー作で、
文藝賞を当時の最年少である17歳で受賞した作品です。
当時、美少女高校生作家として、
作品とは関係ないところで騒がれる彼女を
少しかわいそうに思ったのを覚えています。


今になって読んでみると、
ライトノベルよりも軽く、
ケータイ小説並にお手軽なお話でした。
”インストール”というより、
”アンインストール”とか、
いっそ”初期化”の方が合ってるんじゃないか
とか思ってしまう内容でした。


どうしても、若さ故のあざとさを感じ、
なにより、
文壇の政治的な匂いを感じてしまう作品でもありました。


可愛い女の子が、
ちょっとHな言葉を使ったお話を書く。
それに喜んじゃった文壇のおっさん連中が
賞とか上げてちやほやしちゃった感が否めないんですよね。
文壇のアイドルにさせられてしまったような。


まぁ、確かに、騒がれても仕方ないかな、と思うぐらいに
めちゃめちゃ可愛い方なんですけど。


僕自身、このお話の主人公、朝子のビジュアルイメージは
綿矢氏本人だったり、
映画版の上戸彩のイメージだったりで、
まぁ、そういう気分になるのも
わからなくはないかなとか思ったり。


ただ、それはこの作品の評価とは
まるで関係ないはずなんですよね、本来は。


2年ほど前に、『夢を与える』という新作が出ているみたいです。
大人になった彼女が、
以前ほど騒がれなくなった彼女が
どんなお話を書いたのか、
読んでみたくなりました。


『まだお酒も飲めない車も乗れない、
 ついでにセックスも体験していない
 処女の一七歳の心に巣食う、
 この何者にもなれないという枯れた悟りは
 何だというのだろう。』


インストール

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今、wikiを見て初めて知ったんですが、
映画版『インストール』は片岡K氏が監督してるんですねぇ。
僕は片岡K氏が演出していたフジテレビの深夜番組
『文學ト云フ事』が大好きでした。
彼の監督する映画ならちょっと観てみたいな。