『零式』
このところ、ちょっとSFを読みたい気分になっていたので、
ハヤカワ書店コーナーを重点的に見回してました。
僕は海外の作品が(SFに限らず)あまり得意ではないので、
『雪風』みたいな和製SFを探していたときに見つけた本、『零式』。
まずはあらすじを引用します。
大戦末期の1945年、
帝国本土への遠征特攻を敢行した皇義神國は、
報復の原子爆弾投下により全面降伏する。
そして半世紀後、帝国統治下で鎖国状態の神國。
原始駆動機“鋼舞”を駆る孤独な少女・朔夜は、
己の破壊衝動をもてあましていた。
しかし運命の夜…朔夜の荒ぶる心臓と、
囚われの天子・夏月の夢見る翼が出会うとき、
閉塞世界の根底を揺るがす大いなる物語が幕を開ける―
期待の新鋭が描く、疾走と飛翔の青春小説。
今、思えばこのあらすじで充分地雷の匂いがしてるなぁ。
これを読んで、なぜか勝手に
”レシプロ機の空戦SF物”
だと勘違いしてしまったんですよね。
架空未来の女リヒトホーフェンみたいな。
だってプロローグに零戦とか特攻隊とか出てきたし。
まさかレシプロのバイクだったとは……。
バイクとか、昔から全く興味ないんですよ、僕。
いや、バイクレースとかは嫌いじゃないんですけど、
なんていうか、こういう暴走族とか走り屋的バイクには、もう全く。
そういえば作中に暴装賊なんて言葉も出てきたな。
しかも”ナイトライブス”なんてルビが振ってあったり。ぷぷっ。
内容も体制の抑圧に抗う少女、みたいな。
僕は、盗んだバイクで走り出そうと思ったこともなければ、
校舎の窓ガラスを割りたいと思ったこともないので、
このてのテーマは苦手でして。
ただのちんぴらじゃん。
今でもこういう文化をカッコいいと思う感覚がわからない。
SEX,DRUG&VIOLENCE――
さすがにもう、そんなものに憧れる年齢でもないですしねぇ。
作者のあとがきも、
なんか妙にばんから無頼を気取ってる感じでいただけない。
本人は青春娯楽小説とか成長物語とか謳ってるけど、
こんなものを娯楽だと思えるような腐った青春を
僕は送ってこなかったし、これからも送りたくないし、
こんな成長の仕方もしたくない。
とにかくいろいろカッコ悪いと思ってしまう小説でした。
『つまり、やってることは、
6000馬力を使った押しがけ。
無様で原始的な発動機始動法』
- 作者: 海猫沢めろん
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2007/01/01
- メディア: 文庫
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表紙絵をよく見たら、ちゃんとバイクに乗ってんじゃん……。