『紅はくれなゐ』


ライトノベルにしてはちょっと異質な表紙絵。
あらすじを読んでみると、
どうやら遊郭で展開されるミステリー物。
うん、これは面白そうだ。


西尾氏の新作を読んで以降、
メルトダウン寸前までに高まった読書熱にあおられて
深く考えず衝動的に手に取った本、『紅はくれなゐ』


Amazonのあらすじを引用します。

華やかな活況を見せる遊郭都市、吉原。
街一番の妓楼・秋月楼の花魁『紅』は、
そのおっとりとした優しさと美しい容貌で、
高い人気を誇っていた。
この吉原で、続けざまに殺しが起こる。
被害者はいずれも遊女と国の高官。
街に不穏な空気が漂いはじめたある日、
正月の大行事“花魁道中”を控えた紅の元に、脅迫状が届く。
彼女の身を案じた周囲は道中の中止を勧めるが、
紅は行事の強行を決意する。
そして花魁道中当日…。
果たして、殺しを続けているのは誰なのか?
そして、その狙いは?
愛と憎しみの黒い渦に巻き込まれた、
若く美しき花魁の行く末や如何に―。


このあらすじを読んで、
和風本格ミステリーを期待した僕は間違ってませんよねぇ。
最初はミステリーテイストが強かったんですが
途中から時代活劇になってしまいました。


後半の戦闘シーン、
主人公の紅も周りを囲む脇役も
みんなカッコいいのですが、
それぞれの戦う意味がどうしてもわからない。
より正確に云うなら、そこまでして戦う意味が、かな。
ただの戦闘民族にしか見えない。
それじゃどうして彼女は花魁の道を選んで、
身体を売ってでも生きようとしたのかな。
彼女ほどの能力なら、他にいくらでも方法があったろうに。


もう一つ、舞台が遊郭である意味が伝わってこない。
遊郭』というのは、なんというか、まぁ、
ああいうことをするところなわけで。
もちろん、それだけではないのはわかってますが、
せっかく遊郭が舞台なのだから
テーマにそういう部分を入れてもよかったんじゃないかな。
(”エロを書け”ということではないです)
身体を売る、身体を買うという行為の持つ意味
そういう場所が存在することの意味にまるで触れていないのは、
――作者は女子高生らしいので、
さすがに抵抗があったのかもしれませんが、
どこか”逃げて”いるように感じました。


文章のリズムも良く、設定も面白いだけに、
”ただただカッコいいシチュエーションをつなぎ合わせた”
ような展開がちょっともったいない気がしてしまいます。


ここまで偉そうに辛辣なことを書いておいてなんですが、
しかし、作者の鷹羽知氏、
”化ける”作家さんな気がします。
実はすごく期待しているんです。
こういう方が大人になったときに、どういう物語を書くのか。
今から楽しみでなりません。



『さて。大戦と洒落込もうじゃないか』


紅はくれなゐ (電撃文庫)

紅はくれなゐ (電撃文庫)