『写楽殺人事件』
実は、僕は図書館があまり好きではありません。
もっと正確に云うなら図書館の本が、ですかね。
僕はプチ潔癖性のきらいがあるので、
不特定多数の知らない人が触った本というのが苦手なのです。
なんですが、このところの読書熱の高まりに反して
恐ろしく寒々しい懐具合を鑑み、
図書館を利用してみることにしました。
初めて行った近所の図書館はわりと充実していて
”読んでみたいとは思うけど買うまではちょっと……”
みたいな本をここぞとばかりに借りてきました。
その一つがこれ『写楽殺人事件』。
高橋克彦氏の本は『竜の柩』を読んだことがあったのですが、
それがかなり面白かったのと、
写楽には以前から興味があったのとで
ちょっとだけ期待して読み始めました。
東洲斎写楽という浮世絵師は謎が多く、
未だにその正体がはっきりわかっていないのですが、
この本はその写楽の正体を追い詰めていく歴史ミステリです。
写楽の謎が少しずつ解き明かされていく場面は
多少、ご都合主義な部分は有りますが、
浮世絵の知識なぞほとんどない僕にも本当にスリリングで、
興奮と驚きの連続でした。
期待以上の面白さ。
変に殺人事件とか組み込まず、
『竜の柩』みたいに写楽の謎を追っていくだけの方が
面白かったんじゃないかとも思いますが、
どうも僕は、単純に犯人を捜すミステリより、
こういった謎を解いていくミステリの方が好みみたいです。
このてのミステリに詳しい方、
他にもこういう作品があったら教えていただけると嬉しいです。
『歌舞伎役者の似顔を写せしが、
あまりに真を画んとてあらぬさまに
書なせしかば長く世に行れず、
一両年にて止む。』
- 作者: 高橋克彦
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1986/07/08
- メディア: 文庫
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僕は写楽工房説を推してみたいと思ってます。
版元の蔦屋重三郎をはじめとした、
当時の権力者たちに抵抗しようとしたグループが作り上げた
実在しない幻の浮世絵師、東洲斎写楽。
なんかカッコよくないですか?
っていうか蔦屋重三郎のポジション、カッコよすぎ。
”稀代の名プロデューサー”って感じで。
この人を主人公にしたお話ってのも面白そうだ。