『写楽殺人事件』


実は、僕は図書館があまり好きではありません。
もっと正確に云うなら図書館の本が、ですかね。
僕はプチ潔癖性のきらいがあるので、
不特定多数の知らない人が触った本というのが苦手なのです。


なんですが、このところの読書熱の高まりに反して
恐ろしく寒々しい懐具合を鑑み、
図書館を利用してみることにしました。


初めて行った近所の図書館はわりと充実していて
”読んでみたいとは思うけど買うまではちょっと……”
みたいな本をここぞとばかりに借りてきました。
その一つがこれ写楽殺人事件


高橋克彦氏の本は『竜の柩』を読んだことがあったのですが、
それがかなり面白かったのと、
写楽には以前から興味があったのとで
ちょっとだけ期待して読み始めました。


東洲斎写楽という浮世絵師は謎が多く、
未だにその正体がはっきりわかっていないのですが、
この本はその写楽の正体を追い詰めていく歴史ミステリです。
写楽の謎が少しずつ解き明かされていく場面は
多少、ご都合主義な部分は有りますが、
浮世絵の知識なぞほとんどない僕にも本当にスリリングで、
興奮と驚きの連続でした。
期待以上の面白さ。


変に殺人事件とか組み込まず、
『竜の柩』みたいに写楽の謎を追っていくだけの方が
面白かったんじゃないかとも思いますが、
どうも僕は、単純に犯人を捜すミステリより、
こういった謎を解いていくミステリの方が好みみたいです。
このてのミステリに詳しい方、
他にもこういう作品があったら教えていただけると嬉しいです。



『歌舞伎役者の似顔を写せしが、
 あまりに真を画んとてあらぬさまに
 書なせしかば長く世に行れず、
 一両年にて止む。』


写楽殺人事件 (講談社文庫)

写楽殺人事件 (講談社文庫)


僕は写楽工房説を推してみたいと思ってます。
版元の蔦屋重三郎をはじめとした、
当時の権力者たちに抵抗しようとしたグループが作り上げた
実在しない幻の浮世絵師、東洲斎写楽
なんかカッコよくないですか?


っていうか蔦屋重三郎のポジション、カッコよすぎ。
”稀代の名プロデューサー”って感じで。
この人を主人公にしたお話ってのも面白そうだ。