『狼と香辛料 (10)』

”故郷は遠くにありて思ふもの”


高校を卒業して、僕は、自ら望んで、
生まれ育った土地を離れました。
帰りたいと思ったことなど、一度もありませんでした。
そして2年前、今度は自ら望んだわけではなく、
生まれ育った土地で、また、暮らすことになりました。


できることなら戻りたい。


2年が経った今でも、今この瞬間も、そう思っています。
あの街は僕が僕の中に創り上げた故郷です。


狼と香辛料の最新巻、第10巻、
今作の中でホロとロレンスは気付いてしまいます。
故郷とは、戻るか、失うかのものだけでなく、
創ることもできるものであることに。
そして、それがどれほど難しいことであるかにも。


ホロの故郷を目指す旅も終わりに近づいてきました。
それは同時に、二人の旅の終わりが近いことも示しています。
第6巻で、二人は旅の終わりを意識し始めました。
わずかばかり引き延ばしてきたそれを、
今回のお話の中で、二人は覚悟し始めてきたように思います。
ホロの全てに対して力になれるわけではないことに
気付いたロレンス。
ロレンスに全てを頼ることができるわけではないことに
気付いたホロ。


孤独というのは一人であるということではない。
愛するものに対して、何をすることもできないということだ。


昔どこかで聞いた言葉を思い出しました。


二人がどのようにこの旅を終わらせるのか。
続きを知りたいような、知りたくないような
複雑な気分です。


『悪いが、もう少し我慢してくれないか』


狼と香辛料〈10〉 (電撃文庫)

狼と香辛料〈10〉 (電撃文庫)


以前のエントリーにも書きましたが、
今回のお話には、
アニメ版のOPテーマが本当によく似合っていると思います。


『旅の途中』