『ナイフ』

先日のアニメ『ゴクウ』についてのエントリーの中で
西田シャトナー氏について書いたら、
なんだか妙に懐かしくなり
氏の戯曲『ナイフ』をひっぱりだしてきて読んでみました。


この『ナイフ』は西田氏が主宰していた劇団、
惑星ピスタチオ”の作品です。
ちなみに”惑星ピスタチオ”、最近TVでよく見かける
佐々木蔵之介氏が所属していた劇団です。


大学生のころ、僕が所属していた劇団が
西田氏の戯曲『破壊ランナー』をお借りして
芝居をすることになり、
演技・演出の雰囲気をつかむ参考にと
ちょうどそのとき公演していた『ナイフ』
劇団のみんなで観にいきました。


この芝居を観たとき、僕は、まさに戦慄しました。
こんな面白い芝居があったのか、と。


なかでも彼ら独特の”パワーマイム”と呼ばれる
強引なパントマイムは、それまでの僕の演劇観を
完全にぶち壊してくれました。


パワーマイム
D



この『ナイフ』というお話は、
遙か未来、図らずしも大量殺人犯となってしまった主人公
ジョン・スピード・ナイフが、
自らの意志とは無関係に逃亡の旅を続けることになり、
その中で出会った人々の”運命”の波に流されていく物語です。


著者の西田氏自身が言外に語っているように、
寺沢武一氏のマンガ『コブラ』の中の
あるエピソードをモチーフにしたにしたお話なのですが、
(『コブラ』好きの方には”ウサギレースの話”
 といえばわかってもらえるかな。)
まさかお芝居で『コブラ』のような世界が再現できるとは
思ってもみませんでした。


『ナイフ』を観たあと、えらく興奮した劇団員のみんなと、
どうやったら自分たちにあんな芝居ができるのか
熱く語りながら帰ったのを覚えています。


大学を卒業して、演劇から離れて以降、
戯曲を読むこともほとんどありませんでしたが、
僕は、そういえば当時から、演技をしているより
台本を読んでいる方が好きだったのを思い出しました。


『俺は!
 俺は、誰の運命も!
 俺は、誰の運命も見届けられなかった!
 
 ジョセェェェェフ!
 なんて言ったんだ!
 あの時、なんて言ったんだーっ!
 うおおおおおおっ!』



ぼくの持っているこの戯曲には、
著者の西田シャトナー氏と
惑星ピスタチオ”の看板女優、
平和堂ミラノさんのサインが入っています。



公演会場で台本を購入すると、
好きな劇団員のサインを一つ入れてもらえる
というものだったのですが、
誰のサインにしようか、どうしても選びきれなかった僕は
”シャトナーさんとミラノさん、お二人のサインが欲しい!”
と申し込み用紙に書いてみました。
数日後、郵送されてきた戯曲には、
お二人のサインが入っていました。


僕は平和堂ミラノという女優さんが大好きでした。
彼女は’03年、38歳という若さで亡くなりました。
本当に美しく、本当に可愛く、
迫力のある演技をする女優さんでした。


ミラノさんのご冥福をお祈りいたします。