『塩の街』

先日、一緒に飲んだくれてた友人のオススメ。
有川浩氏の作品は『図書館戦争』を読んだことがあり、
この塩の街もずいぶん前に購入していたのですが、
表紙の絵がどうにも好きになれなくて、
ずっとほったらかしになってました。


舞台設定は謎の巨大ナトリウムが飛来した東京、
人が塩の柱と化す”塩害”のため、崩壊寸前の社会で暮らす、
一人の男と一人の少女。
旧約聖書のソドムとゴモラ
ロトとその妻のお話がモチーフなんでしょう。


こう書くとSFとかファンタジーっぽいですが、
内容はべったべたのラブストーリーです。
もうこれでもかってくらいべったべたです。
岩井俊二の『ウォーレスの人魚』じゃないですけど、
こういう設定はハードにした方が面白いと思うんだけどなぁ。


”たった一人が手にはいるなら世界が滅びてもかまわない”


どうなんですかね、それ。


愛する人が世界を救うために命を賭けて戦おうとしているとき、
その人を失いたくないからそれを止める。


有り、だとは思います。
昔の僕は間違いなくそれを選んだでしょう。


でも、ホントにこの世界に二人だけで楽しいか?
二人で一緒に世界と関わっていく方が楽しくないか?


”自分も、愛する人も、世界も、
 どんな手段を使ってでも
 自分の守りたいもの全部を守る”


僕はこっちを選びたい。
このお話の中に出てくる、
入江というキャラクターなら
そうするんじゃないかな。


塩害なんて無くったって、
明日、自分が生きているとは限らない、
愛する人が生きているとは限らないんだし。


世界全部を犠牲にして愛する人と一緒にいたって、
楽しくないですよ、多分。


どうせ独善な選択なら
僕はより楽しい方を選びたい。


綺麗事ばっかりのキャラクターの中で、
入江の自分勝手な振る舞いが
一番人間味があって好感が持てました。


『愛は世界なんて救わないよ。賭けてもいい。
 愛なんてね、
 関わった当事者たちしか救わないんだよ。
 救われるのは当事者たちが取捨選択した結果の対象さ』


塩の街―wish on my precious (電撃文庫)

塩の街―wish on my precious (電撃文庫)


この本の作者、有川浩氏は女性です。
女性が書く男性のキャラクターって
どうしても女性に都合の良い男性キャラになってる気がします。
当然、男性が書く女性のキャラクターは
男性に都合の良いキャラクターばかりなんですけど。
どっちもどっちですが……
ぶっきらぼうだけど優しくて、サバイバル能力があって、
天才戦闘機乗りの男……。
僕は男なんで、そんな奴に感情移入できません。



いろいろ書いたけど、
つまらないお話だったわけではないんですよ。
この歳になると、
べったべたのラブストーリーに弱くなるんです。
なるよなぁ、N。