『アスラクライン』

今クールから始まったアニメの中で、
一つだけ観ようと思っていた作品がありました。
三雲岳斗氏の小説が原作の
アスラクラインがそれです。
原作の小説は読んでいないのですが、
昔から好きだった三雲作品の初アニメ化ということで、
久しぶりにリアルタイムでアニメをと意気込んでいました。
しかし、その意気込みもほんの束の間。
僕の契約していないCSでしか放送されていないことが発覚、
いきなり頓挫してしまいました。
ちくしょう。


というわけで、腹いせに原作の小説を読むことに。
購入前に少しだけ仕入れた情報によると、どうやらロボット物な感じ。
最近は萌えっぽい作品が多い三雲氏ですが、
初期の作品にロボット物が幾つかあり、
それがめちゃめちゃ面白かったので、
この『アスラクライン』にも期待して読み始めました。


Amazomのあらすじを引用します。


夏目智春はごく平凡な十五歳。
ただし幽霊憑き。
水無神操緒は智春の幼なじみ。美少女。スタイル良好。
ただし、幽霊。
高校入学式の前日、二人の前に現れたのは
黒ずくめの服を着た綺麗なお姉さん。
彼女が智春に手渡したトランクには謎の兵器、
機巧魔神が封印されていた…。
そんな謎のトランクを狙って智春の前に現れるのは、
自称・悪魔の巫女もどき少女と、
第二の幽霊を連れた幽霊憑きの生徒会長。
世界を救うために悪魔を滅ぼせって、
そんなことを命令されても困るんですけど―?


以前にこのBLOGの中で
宇多田ヒカルの声ならどんな曲でも素敵な曲”
と書きましたが、
小説にも同じようなことが当てはまる場合があります。


”この作家の文体ならどんな本でも面白い”


三雲氏の文体はまさにそれです。


他には『国境の南、太陽の西』以前の村上春樹氏、
評論家でマンガ原作者の大塚英志氏なんかがそうですが、
彼らの作品は内容度外視で、読んでるだけで気持ちいい。
(もちろん内容も面白いものが多いんですが)


このアスラクライン
以前の三雲氏の作品に比べると、正直、数段落ちます。
僕に三雲作品を薦めてくれた全弟は、
”最近の三雲はヲタク受けを狙い過ぎ”
とすっぱり切り捨ててましたが、
それに近い感想を僕も持ちました。
僕が最近、三雲氏から離れていたのも
それが一番大きな理由でしたし。


なんですが……面白いんです、やっぱり。
いや、なんというか読んでいて心地よいんです。


お話そのものは荒唐無稽なコメディーもので、
高橋留美子氏のマンガのような雰囲気でした。
ただ、サイドストーリーが多いせいか、
全体的に冗長な感じが否めません。
いつになったら本筋が進むんだろう、みたいな。


それでも、僕にとって三雲氏の文体は
相変わらず中毒性が強いようで、
10巻まで一気に読んでしまいました。


挿絵があまり好きなタイプの絵ではなかったので、
アニメを観れなかった悔しさは多少落ち着いたのですが、
三雲氏の文体のリズムがアニメでどう表現されているのか、
別の興味が沸いてきてます。


よし、いつも通り、DVD化されたら、だな。


『−−だいじょうぶ、操緒がついてるよ』


アスラクライン (電撃文庫)

アスラクライン (電撃文庫)


……そうは云っても、
やっぱり内容が面白いに越したことはないわけでして。
全弟の云う通り、最近の三雲氏の作品は
どうもヲタク受けを狙い過ぎてる気がします。
あざと過ぎるというか。
まぁ、氏の作品に限らず、
最近はそんなのばかり氾濫していて、
少し辟易としています。


某巨大掲示板に、別のアニメについての書き込みですが、
こんな言葉がありました。


”俺はヲタクだけど、
 ヲタク向けを好んでヲタクになったわけじゃねえんだよ。”


同じくヲタクの僕は、思わず大きく肯いてしまいました。


それに、最初からヲタクを狙った作品で
爆発的に流行ったりしたものって少なくないですか?
そういうことだと思うんです。