『手のひらに物の怪』

昔はファンタジー小説といえば、
”中世ヨーロッパ風の、剣と魔法の世界”が鉄板だったのですが、
最近は和風ファンタジーもたくさん見かけるようになりました。
陰陽師密教、怪異、アヤカシetc...
孔雀王からこっち、このてのテーマもお気に入り。
それっぽいタイトルが冠された、
それっぽい表紙絵の本をてにとってしまうのも
致し方なしといったところ。


Amazonのあらすじを引用します。

怒り心頭の女子たちに囲まれた草太。
話を聞くと、自分が複数の女子に携帯メールで告白したという。
まったく身に覚えがなかったが、
それは携帯電話に取り憑いた付喪神ミコトの仕業だったのだ。
イタズラ好きで人懐っこいミコトとの関係に慣れ始めた草太の前に、
“耳鳴坂”の少女・刹里が現れ、
「こちらと関わってはダメ」と告げるのだった―。
日常にひそむ、物の怪たちとの物語が始まる。


設定はいいんですよね。
物に宿る神。
持ち主が器物に抱く愛着。
器物が持ち主に抱く愛着。
素敵じゃないですか。


ですが、この『手のひらに物の怪』という作品、
あまりにも”人”が描けて無さ過ぎる。
作者曰く、
”暗い・重い・痛いの三重苦を背負った物語”を
”コメディ(?)仕様”にしたとのことですが、
ただ単に薄っぺらくしてしまっただけのように感じました。
心情の変化なんかが唐突過ぎて、釈然としない。
あんなに軽薄だった主人公が
カニバリズムに近い行動を取るまでに、
そんなに急に変われるものかな。


何から何まで軽いんですよね。
まぁ、だから”ライトノベル”なのかもしれませんが。
にしても、もう少し葛藤とか苦悩とかしてみてもいいと思いますよ。
コメディ=喜劇は軽いものとは限らないのですから。


『その逆もしかりよ。
 器物の方が、持ち主に愛着を持つこともあるの。
 知らなかった?』